ゲーム界、そしてエンタメ業界に衝撃が走っています。バンダイナムコホールディングス（バンナムHD）が発表した最新のIP別売上データによると、あの「ドラゴンボール」が長年グループの顔であり続けた「ガンダム」の売上を遂に抜き去り、年間1,906億円という圧倒的な数字でトップに躍り出たのです。
これは単なる数字のニュースではありません。バンダイナムコグループのIP戦略における、まさに歴史的な「エース交代」と言える出来事です。
数字で見るバンナムIPの現在地：ドラゴンボール、ガンダム、そしてワンピース
まずは、その衝撃の数字を他の主要IPと比較して見てみましょう。以下は、バンダイナムコHDが発表した2025年3月期（※）の主要IP別売上高（グループ全体）の一部抜粋です。
（数字はIR資料などに基づき、端数処理などにより一部ブレがある可能性があります。来期予想は会社計画です。）
この表から、2025年3月期の実績で**「DRAGON BALL（1,906億円）」が「機動戦士ガンダム（1,535億円）」を明確に上回り、グループ全体のIP売上ランキングでトップに立った**ことが一目瞭然です。ONE PIECEも1,395億円と凄まじい数字を叩き出しており、1,000億円を超える「三本柱」がグループを牽引している状況が見て取れます。
驚異の売上を牽引する「家庭用ゲーム」というエンジン
では、なぜドラゴンボールはこれほどまでに売上を急伸させ、長年の絶対王者だったガンダムを超越することができたのでしょうか？その最大の原動力となっているのが、家庭用ゲーム事業の世界的成功です。
2024年3月期の実績1,406億円から、わずか一年で500億円もの増加（1,906億円へ）という飛躍的な伸びを牽引したのは、間違いなく『ドラゴンボールZ カカロット』や『ドラゴンボール ファイターズ』といった、近年の高品質な家庭用ゲームタイトルの継続的なヒットと、それらが国内外で幅広い層に受け入れられたことでしょう。ゲームがIP全体の収益性をかつてないレベルにまで押し上げています。
世界が熱狂するドラゴンボールゲームの「勝利の方程式」
なぜ、ドラゴンボールのゲームはこれほどまでに世界中のゲーマーを惹きつけ、巨大な売上を生み出し続けることができるのでしょう？そこには、いくつかの「勝利の方程式」が見て取れます。
- 普遍的なIPパワーとキャラクターの魅力: 国境や文化を超えて認知されている孫悟空たちの物語とキャラクターは、ゲームへの入り口として最強のフックとなります。
- ゲーム映えする題材を最大限に活かす開発力: 派手なバトル、超人的な技の数々は、格闘ゲームやアクションRPGとして最高の素材です。ファンがアニメで見たあのシーン、あの技を自分の手で再現できる「体験」が提供されています。
- 幅広いニーズに応える多様なジャンル展開: 格闘ゲーム、RPG、カードゲームなど、様々なジャンルで展開することで、コアゲーマーからライトユーザーまで、多様なファン層を取り込んでいます。
- 「懐かしさ」と「新しさ」の絶妙な融合: 過去の人気シリーズを踏襲しつつ（例: Sparking!）、最新のグラフィックやシステム、ストーリーを取り入れることで、古参ファンを呼び戻しつつ新規ファンを獲得しています。
これらの要素が複合的に作用し、ドラゴンボールのゲームは単なるキャラクターゲームに留まらない、完成度の高いエンターテイメントとして世界市場を席巻しているのです。
次なる布石は次世代へ：『Sparking! ZERO』とNintendo Switch 2の展開
家庭用ゲームでの快進撃を背景に、ドラゴンボールIPの次なる一手が早くも注目を集めています。それが、ファン待望のシリーズ最新作『ドラゴンボール Sparking! ZERO』です。このビッグタイトルが、IP全体の売上、特に家庭用ゲーム分野において、さらなる記録更新の鍵となる可能性を秘めていることは言うまでもありません。来期予想（2026年3月期予想 1,500億円）を見ると、今期の驚異的な数字からの反動減が見込まれているようですが、『Sparking! ZERO』のヒットがこの予想を上振れさせる可能性も十分に考えられます。
そして、そんな注目作に関する、ゲームファンをさらに沸かせる情報が浮上しています。それは、正式名称が発表されたばかりの任天堂の次世代ゲーム機「Nintendo Switch 2」版の『ドラゴンボール Sparking! ZERO』が、ゲームのレーティング審査機関のリストに登場したというニュースです。
これが事実であれば、バンナムHDが『Sparking! ZERO』を、2025年内に発売が予定されているNintendo Switch 2の有力なローンチタイトル、あるいは比較的早期の主力タイトルとして位置づけていることの強い示唆となります。これは、既存のプラットフォームでの成功に留まらず、次世代ゲーム市場、特に発売と同時に世界的な普及が見込まれるNintendo Switch 2の広大なユーザーベースを強く意識していることの表れでしょう。新型ハードの性能を活かした、さらに進化したドラゴンボール体験を提供することで、IPの勢いを未来へ繋げようという明確な戦略が見て取れます。
まとめ：進化を止めないドラゴンボールIPの「エース戦略」
2025年3月期に年間売上1,906億円を達成し、バンナム内のガンダム超えという歴史的偉業を成し遂げたドラゴンボールIP。その成功の最大の要因は、データからも明確に見て取れる「家庭用ゲーム」の存在でした。
そして、ファン待望の新作『Sparking! ZERO』、さらには正式発表された次世代機「Nintendo Switch 2」での展開の可能性といった情報は、ドラゴンボールIPが今後も立ち止まることなく、常に新しい挑戦を続けながら進化していく姿勢を示しています。来期予想は一時的に数字が落ち着く見込みですが、新作ゲームのヒットや次世代機展開が、再び市場を大きく動かす可能性は十分に秘めています。
バンダイナムコグループのエースとして君臨し始めたドラゴンボールIP。その「ゲームを核としたIP戦略」の最前線から、今後も目が離せません。次にどんな驚きが待っているのか、期待が高まります。
