Abtoyz Blog

ニュースの裏側に潜む「構造」を、独自の視点と個人的な思い出で読み解く考察ブログ。テクノロジーから都市論、文化史まで、抽象的な事象を言語化し、変化の激しい現代を賢く生き抜くための視座を提示します。

バフェットが正しいとしたら、人類はAIに負けたことになる

アマゾン30兆円のAI特攻と、賢者バフェットが選ぶ「実物資産」(イメージ)

まず、一つの場面を想像してほしい。

あなたが15年かけて世界一になった。売上高で、ついにライバルを抜いた。業界の頂点に立った瞬間、会場の全員が立ち上がって拍手をくれると思っていた。

しかし振り返ると、世界で最も有名な投資家が静かに席を立ち、あなたの株を77%売り払っていた。

 


2026年2月20日、アマゾンが世界一の売上高を達成した日に、それが起きた。


 

「30兆円は狂気ではない」と私が思う理由

最初に立場を表明する。

私は、アマゾンが2026年に注ぎ込む2,000億ドル(約30兆円)の設備投資を「狂気」とは思わない。それどころか、AIの将来性を本気で信じるなら、これは当然の額だと思っている。

理由を説明する前に、一つ質問させてほしい。

電気がない世界に突然「電気」が発明されたとして、あなたは「電線を引きすぎだ」と言うだろうか。

AIはそういうものだと私は思っている。今まで人間にしかできなかった思考・判断・創造を、機械が肩代わりし始めた。その「電線」を最初に世界中に張り巡らせた企業が、次の100年のインフラを握る。

これは抽象論ではない。私には根拠がある。

この1年間、私は毎日平均8時間AIを触り続けた。仕事で、実験で、時には遊びで。そしてその間に、AIは何度もバージョンアップした。

変化は数字ではなく、体感としてやってくる。

半年前、画像生成AIに人物を描かせると高確率で腕が3本生えた。今も完全には治っていない。しかし同じ時期に、テキストの「埋め草」は別物になった。構成を整える、表を作る、要約する──そういう定型作業の速度と精度が、ある時期から急に「これでいい」に変わった。惜しいではなく、これでいい、に。

進化は一枚岩ではない。得意なことから先に、圧倒的に伸びる。だからこそ、毎日触っていないと見えない。グラフで見る成長曲線と、手で触れて感じる変化は、まったく別のものだ。

これを「バブルだ」と言う人は、おそらくAIを毎日使っていない。

だからアマゾンは今、全力で電線を張っている。

そしてここが重要なのだが、この投資は「いつか需要が来るだろう」という希望的観測の上に立っていない。AWSの受注残高はすでに2,440億ドルある。「電線が足りなくて客を断っている」状態から始まっている。作れば売れる。売れるから作る。それだけの話だ。

「1990年代の光ファイバーと同じ過ちでは」という声がある。違う。あの時代の光ファイバーは「敷いてから客を探した」。今のアマゾンは「客が並んでいるのに工場が足りない」。この差は決定的だ。

それに、もう一つある。

アマゾンは降りたくても、降りられない。

グーグルが年間1,800億ドル投資し、マイクロソフトが1,500億ドル投資し、メタが1,200億ドル投資する世界で、一社だけ「投資を控えます」と言った瞬間、何が起きるか。クラウドの顧客は、より速く・より賢いインフラを持つ競合に流れる。一度流れた顧客は戻らない。

これは経営判断の問題ではなく、サバイバルの問題だ。

 


それでも、私はバフェットを笑えない

ここまで書いて、私は少し手が止まる。

なぜなら、バフェットに関しては「あいつは時代遅れだ」と言いたくない理由がある。具体的で、個人的な理由が。

2020年、バフェットは日本の五大商社株を静かに買い始めた。伊藤忠、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅。世界中のファンドマネージャーが「なぜ今さら日本の総合商社を?」と首を傾げた。地味で、成長性が低く、日本という「オワコン市場」の象徴のように見えた。

その後何が起きたか。商社株は軒並み2〜4倍になった。

同じ時期、バフェットはアメリカのハイテク株が「高すぎる」と言い続け、現金を積み上げ続けた。嘲笑された。しかし彼のバークシャーは今、3,340億ドルの現金を抱え、次の「安い買い物」を静かに待っている。

バフェットが日本商社を買った本質的な理由は「安くて、確実で、代替不可能」だった。資源・食糧・エネルギーの実際の取引を動かすネットワークは、AIが生成できない。コードでは複製できない。100年かけて築いた信頼関係と物理的なサプライチェーンは、それ自体がお堀だ。

そのバフェットが今、アマゾンを売ってニューヨーク・タイムズを買った。

「AIには真似できない一次情報と、1,278万人の有料購読者を持つ信頼ブランド」を。

 


「米国の停滞」という、もう一つの視点

バフェットが近年のポートフォリオで一貫してやっていることがある。アメリカへの集中投資を、静かに分散させている。

日本商社。ニューヨーク・タイムズ。アップル株の大幅削減。銀行株の削減。

そして現金の積み上げ。3,340億ドルという、かつてないほどの現金は「良い買い物が見つかっていない」という意味でもあるが、「今の市場全体が高すぎる」という意味でもある。

米国の財政赤字は膨張し、政治は分断され、金利は高止まりし、ドルへの信頼に静かな疑問符がつき始めている。バフェットが「米国の次の30年」に対して、かつてほど強気でなくなっているとしたら。

そしてアマゾンの30兆円投資が「米国が世界のAIインフラを支配する」という前提の上に成り立っているとしたら。

その前提が揺らいだとき、投資は何になるのか。

 


結局、どちらが正しいのか

正直に言う。分からない。

ただ、こういう言い方はできる。

アマゾンの30兆円が正しいとしたら、それはAIが人類の生産性を根本から変え、その恩恵がアマゾンのインフラを通じて世界中に届くということを意味する。それは素晴らしい未来だ。

バフェットが正しいとしたら、それはAIへの期待が過熱しており、現実の需要はそこまで追いつかず、膨大な設備が過剰投資になるということを意味する。それは厳しい未来だ。

そして、もし本当にバフェットが正しいとしたら、もう少し踏み込んで言うと。

それは私たちが「AIはそれほど世界を変えない」と認めることでもある。私が信じている「電線の比喩」が、ただの熱狂だったということになる。

バフェットが正しいとしたら、人類はAIに過大な夢を見た、ということになる。

私はそれを信じたくない。だからアマゾンを応援している。

でも、信じたくないという感情と、正しいという論理は、別物だ。それは分かっている。

 



あなたはどちらを信じるか。

私は毎日8時間、自分の手でその答えを確かめ続けている。



【データ出典】本記事中の数値はSEC提出書類・各社決算発表・報道に基づく。「バフェットがこう考えた」という記述は筆者の解釈。投資判断は自己責任で。