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【中島聡】日銀ETFで1000万円資産給付を!少子化の「経済不安」を根本解消する提言

新生児に「1000万円分のETF」を配ることはできるか?(イメージ)

日本は今、「少子化による国家存立の危機」と「日銀の巨大な出口戦略リスク」という、二つの構造的な爆弾を抱えています。この二つを一挙に解決し、日本の未来を根本から変えうる劇薬的な提案を提唱しているのが、元マイクロソフトのエンジニアであり、世界的発明家の中島聡氏です。

彼の提案、通称「日銀ETF活用案」は、経済界や一部の論客から「論理的に正しい」と評価されながらも、「実行不可能」と見なされる、究極の政策チャレンジです。本稿では、中島氏の主張の核心を深掘りし、なぜこれが「5年で間に合わない」ほど非情な現実を突きつけられるのか、その構造的な困難を詳細に論じます。

 


 

1. 提案の核心:生まれてくる子どもに「未来資産」1,000万円

中島氏の提案は、日本の「未来世代へのツケ」を、単なる借金ではなく「資産」という形で先渡しすることで、社会構造を変革しようという、極めて異質な発想に基づいています。

 

提案の論理的根拠:二つの非効率の是正

中島氏がこの提案の必要性を訴える論拠は、現在の日本が抱える「非効率」「先延ばし体質」にあります。

  1. 金融政策の非効率(日銀のETF処理リスク):

    • 日銀が保有するETFは、2025年現在、概ね70兆円台後半(時価ベース)という巨額に上ります。日銀が金融政策を正常化し、買い入れを終了した後も、このETFは市場に影響を与えないよう「100年かけて売却するしかない」という、非効率でリスクの高い状況にあります。このままでは、次の金融危機時に日銀の財務が巨額の含み損を抱えるリスクを放置することになります。

    • 中島氏の主張: 「なぜ今ある公的資産を、未来の世代のために活用しないのか?」 日銀のETFを政府が買い取り、その処理を一気に進めることで、金融市場の安定を図りつつ、資産を「未来のための負債の付け替え」に利用すべきだ、と主張します。

  2. 少子化対策の非効率(未来への投資不足):

    • 既存の少子化対策は、児童手当の拡充など「消費型」対症療法に終始し、「経済的不安」という根本原因を解決できていません。

    • 中島氏の主張: 「生まれてくる子どもに1,000万円相当の資産を付与せよ。」 この巨額な資産給付を子どものための非課税口座に入れ、起業優遇などと組み合わせることで、「子どもを産むこと」が「国家による未来への投資」となり、少子化という負のループを断ち切る唯一の「劇薬」であると強く訴えます。この提案は、他の対策では得られない「長期的な安心感と起業意欲」を生み出すことを目的としています。

 

政策の具体像:70兆円の債務を背負う覚悟

政府が日銀ETFを買い取ることで生まれる70兆円規模の政府債務は、この提案の実行における、政治の「覚悟」の象徴です。この規模の資金移動は、日本の財政ルールそのものの変革を要求します。

 


 

2. 究極のメリットと反論への論理的防御

この提案の最大の優位性は、「消費」ではなく「資産」として給付し、長期的な経済活性化を目指す点にあります。しかし、反対派の最も強い論拠である「経済的リスク」「不公平性」に対して、中島氏の主張は明確な防御論を用意しています。

 

経済的リスクとその防御:70兆円の債務は何を意味するか?

反対派は、この提案を「単なるバラマキ」ではなく、「未来世代への増税」の根拠であると批判します。

  • 反対派の懸念: 70兆円の債務増は、将来的に国債暴落や国民への増税という形で、真の負債転嫁につながると主張されます。

  • 中島氏側の防御論: この給付は、「消費型」のバラマキとは異なり、子どもたちの「長期的な資産形成」と「起業インセンティブ」に利用される「未来への戦略的な投資」です。これにより増えた税収や経済成長が、70兆円の債務を最終的に上回るとする、成長志向の論理で反論します。

 

世代間公平の議論:最も難しい「不公平」の壁の突破口

この政策は、「なぜ子どもを持たない世帯や、既に子育てを終えた世帯には給付がないのか」という、政治的に最も難しい「不公平感」の壁に直面します。

  • 中島氏の防御論(世代間公平のロジック): この給付は、「個人の努力に対する報酬」ではなく、「国家存続のための緊急投資」であるという哲学で貫かれます。

  • 哲学的回答: 既に高齢世代は年金や医療といった形で、過去の世代間移転の恩恵を受けています。一方で、このまま少子化が進めば、未来世代は支援を受けるパイそのものが消滅します。この給付は、人口構造の崩壊を防ぎ、結果的に年金制度を支える未来の担い手を増やすための「最後の防衛線」であり、全世代の利益につながるという論理的な位置づけを明確にします。


 

3. 実行を阻む非情な現実:指導力の「要素欠損」という構造

この提案は、論理的には優位性を持ちますが、「5年という時間では間に合わない」ほど、日本の政治システムに内在する課題と直面します。

 

時間的な臨界点:2030年の壁と対抗策の限界

少子化対策が効果を発揮するためには、2030年という人口学的な臨界点までに、出生率の減少傾向に歯止めをかけなければ、「不可逆的な縮小」に入ります。現在の出生数は過去最低を更新し続けており、手遅れになるまでの猶予はもはや数年単位にまで短縮されています。

  • 遅延の代償: 法改正やシステム構築にかかる数年間を、政治的・制度的な調整で浪費すれば、政策が「実行した時には手遅れ」となり、巨額のコストが無駄になるという最悪の結末を迎えます。

 

議論の火付け役の必要性:なぜ「ひろゆき氏のような論客」なのか

この政策の実行には、政治家による「強行的な断行」が不可欠ですが、その前提として「世論の爆発的な圧力」がなくてはなりません。この「圧力」を生み出すために必要となるのが、既存の常識を論理で破壊する「議論の火付け役」です。

ひろゆき氏のような論客は、「論理の簡素化」によって、複雑な財政・金融の議論を国民が理解しやすい二択に落とし込みます。そして、「論理的におかしいならルールを変えるべき」という姿勢で論破し、議論の停滞を打ち破る「世論のマグマ」を生成する役割を担います。つまり、彼らは中島氏の「論理」を「国民の共有財産」にするための「伝道師」であり、政治家を動かすための「外部からの圧力装置」として、その存在が論理的に必要となるのです。

 

究極のリーダーシップの不在:なぜ「実行者」がいないのか

この提案の実現に必要なのは、中島氏の「論理の正しさ」を「政治の力」で実現する、異質の指導力です。しかし、日本の政治システムは、この種の指導力を極めて生み出しにくい構造にあります。

この政策を「5年以内」で断行するために、リーダーシップが統合すべき三つの要件が、現在、欠如しています。

 

1. 政策的合理性の確保(理論家としての機能)

強い決断の基盤となる「賢さ」です。中島氏の論理を正確に理解し、財務省や日銀OBが繰り出す財政的・金融的な難題に対し、論理的に破綻しない緻密な制度設計と反論を行う専門的知見が不可欠です。

 

2. 政治的覚悟と権力の集中(断行者の機能)

「政治的タフネス」です。自身の政治生命と引き換えにでも、党内反対派、財務省、日銀という三つの抵抗勢力を排除し、法改正と行政の実務をトップダウンで強行する、非情な決断力と絶対的な権力基盤が必要です。

 

3. 国民的訴求力(メッセンジャーとしての機能)

世論を味方につける「カリスマ性」です。「不公平だ」という批判を上回る強いメッセージで国民の心を掴み、政治家は批判よりも国民からの期待を優先せざるを得ない状況に追い込まれます。

現在、この三つの要件すべてを高い次元で兼ね備え、なおかつ中島氏の提案を支持する意志を持つ指導者は見当たりません。中島氏の提案は、「論理は正しいが、実行者がいない」という、日本の政治システムが持つ指導力の「要素欠損」という、極めて非情な現実に直面しているのです。