
近年、私たちの生活にAIが深く浸透しつつあります。特に、対話型AIや生成AIの進化は目覚ましく、その最前線で注目を集める存在が、楽天グループの「Rakuten AI」です。
2025年7月30日に開催された自社イベント「Rakuten AI Optimism」で、エージェント型AIツール「Rakuten AI」の本格提供が開始されました。これは、楽天が目指す「エージェント型エコシステム」の実現に向けた大きな一歩であり、私たちの買い物体験を大きく変える可能性を秘めています。
Rakuten AIの進化と、その中心にある「エージェント型」の概念
これまでのRakuten AIは、楽天グループの膨大なデータを活用し、パーソナライズされた商品推薦やサービス連携を強化してきました。しかし、今回の本格提供開始でより明確になったのは、「エージェント型AI」という概念です。
エージェント型AIとは、単に情報を検索したり質問に答えたりするだけでなく、ユーザーの意図を深く理解し、複数のサービスを横断して自律的に情報収集やアクションを実行するAIを指します。まるで専属の秘書やコンシェルジュのように、ユーザーが望むことを先回りしてサポートしてくれる存在と言えるでしょう。
なぜ「エージェント型エコシステム」が私たちの買い物を変えるのか

楽天は、このエージェント型AIを基盤とした「エージェント型エコシステム」の構築を目指しています。これにより、私たちの買い物体験は次のように進化すると考えられます。
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究極のパーソナルアシスタント: 楽天が持つ約3兆件とも言われる購買履歴や行動データをAIが深く学習し、あなたの好みやライフスタイルを誰よりも理解します。これにより、「今度の週末に家族で旅行に行くんだけど、現地の美味しいご飯と、そこに着ていく服を提案して」といった複雑な要望にも、AIがあなたの過去の旅行履歴やファッションの傾向まで考慮して、最適な提案をしてくれるようになるでしょう。
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手間いらずのシームレスな体験: 楽天市場での買い物はもちろん、楽天トラベルでの旅行予約、楽天Koboでの書籍購入など、楽天グループ内のあらゆるサービスがAIによってシームレスに連携します。例えば、旅行の計画をAIに依頼すれば、航空券やホテルの予約提案だけでなく、現地で使えるクーポン情報、さらには旅行先で必要なアイテムを楽天市場からピックアップして提案し、そのまま購入手続きまでサポートしてくれるかもしれません。
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新たな発見と「気づき」の創出: AIがあなたの潜在的なニーズを掘り起こし、これまでの買い物では出会えなかったような商品やサービスを提案してくれるかもしれません。「こんなものが欲しかった!」という感動や、予期せぬ発見が、日々の買い物の中に増えていくでしょう。
「本格提供」と今後の展望
今回の「本格提供」開始は、Rakuten AIがすでに一部のサービスで利用可能であることを示唆しており、今後、楽天モバイルの「Rakuten Link」アプリをはじめ、楽天グループの様々なサービスへの導入が加速すると見られます。
また、2025年7月14日に報じられた「【独自】経産省が”楽天AI”を支援へ 国内最大級の生成AI開発目指す」というニュースが事実であれば、Rakuten AIは単なる楽天グループ内のサービス強化に留まらず、日本のAI戦略における重要な柱の一つとして、より汎用的な大規模生成AIの開発へとその歩みを進める可能性も秘めています。政府からの支援が具体化すれば、その技術力と開発スピードはさらに加速し、日本の産業全体にも大きな波及効果をもたらすことが期待されます。
データの安全性とAI倫理への責任
AIの進化と大量のデータ活用には、プライバシー保護と倫理的な配慮が不可欠です。楽天が、膨大なユーザーデータをどのように安全に管理し、匿名化や利用目的の透明化を通じてプライバシーに最大限配慮していくのかは、今後も重要な注目点となるでしょう。また、生成AIが持つ誤情報の生成や差別・偏見の助長といった課題に対し、責任あるAI開発・運用をどのように進めていくのか、その姿勢にも注目が集まります。

Rakuten AIの本格提供開始は、楽天ユーザーの買い物体験を、よりパーソナルで、よりシームレスなものへと進化させる第一歩です。今後の「エージェント型エコシステム」の展開と、その先に広がる新しいショッピングの形に、大いに期待しましょう。