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作家の深層心理とAIの進化:手書きから「ドラゴンボールの続き」まで、創作の未来を徹底考察

手書きには、独特の「思考プロセス」がある(イメージ)

作家・大槻ケンヂさんが今も手書きで原稿を執筆しているというニュースは、デジタル全盛の現代において、私たちに「創作」という行為の根源を改めて問いかけます。なぜ、いまだに手書きにこだわる作家がいるのか?そして、その対極にあるかのように見えるAIとの共同執筆は、未来の創作に何をもたらすのか? この問いは、単なるツールの話に留まらず、人間の創造性、仕事の未来、そして社会の変革を深く掘り下げるものとなります。

 


なぜ手書きなのか?思考と身体の深い連動

大槻ケンヂさんのように手書きを貫く作家がいるのは、そこにデジタルツールでは得られない「思考のプロセス」があるからです。

手書きは、単に文字を書く行為以上のものです。ペンを握り、紙の上を滑らせるという身体的な動きは、脳内の思考を刺激し、より深く、多角的にアイデアを掘り下げる助けとなります。指先から腕へのフィードバックが、新たな思考を誘発する循環を生み出すのです。

また、手書きは自由なレイアウトと非線形な思考を可能にします。パソコンの文書作成ソフトが文字を線形に並べるのに対し、手書きであれば、余白にメモを書き込んだり、図を描いたり、矢印で関連付けたりと、より柔軟に思考を可視化できます。これにより、論理的なつながりだけでなく、直感的なひらめきや、一見無関係に見えるアイデア同士の関連性を見出しやすくなることもあるでしょう。

さらに、手書きはデジタル機器特有の通知やインターネットの誘惑から離れ、集中力を維持しやすいという利点もあります。タイピングよりも速度が遅いため、書き残すべき重要な情報やアイデアを吟味する時間を与えられ、結果としてより洗練された思考へと導かれることもあるのです。

実際、大槻ケンヂさん以外にも、いまだに手書きで執筆を続ける作家は少なくありません。たとえば、林真理子さんは自他共に認めるアナログ作家で、いまだに原稿用紙に手書きで執筆されていますし、みうらじゅんさんも松本清張に憧れて手書きにこだわると語っています。故人ですが、大江健三郎さんも終生手書きでの執筆を続け、その自筆原稿は東京大学文学部に所蔵されています。夢枕獏さんもパソコンを使えるようになった現在でも、原稿は手書きで執筆されているとのことです。

 


手書き原稿が招く「大変なコスト」と、それでも選ばれる理由

しかし、現代において手書き原稿は、編集者や出版社に「大変なコスト」を強いる側面があります。

まず、手書き原稿はすべて手作業でタイピングし、デジタルデータに変換する必要があります。これは時間と労力がかかる上に、誤字脱字のチェックや修正・校正のプロセスも複雑化させます。レイアウト調整の手間も増え、紙媒体ゆえの保管・管理の課題も伴います。

それでもなお、手書きを続ける作家が存在し、出版社がそれを受け入れているのは、その「コスト」を上回る「価値」がそこにあると判断されているからです。

作家にとっては、手書きでなければ生まれない独自のアイデアや表現、思考の深みがあり、それが作品の質に直結します。出版社も、その作家の唯一無二の創造性を尊重し、最終的に読者に届く作品の価値が高まるのであれば、手間を惜しまないのです。また、「手書きの作家」というスタイル自体が、現代においてはユニークなブランドイメージとなり得ることもあります。そして、手書き原稿は、作家の思考の軌跡がそのまま残された、後世に残る貴重な資料としての価値も持ちます。

 


コンピュータが拓く執筆の効率と新たな思考

現代の多くの作家は、コンピュータで執筆している(イメージ)

手書きの良さがある一方で、現代の多くの作家はコンピュータを駆使して執筆しています。コンピュータでの執筆は、手書きとは異なる形で作家の「思考のプロセス」を支え、創作活動を効率化しています。

最大の利点は推敲と修正の容易さです。文章の削除、追加、並べ替えが瞬時にできるため、作家は心ゆくまで推敲を重ね、より完成度の高い文章を追求できます。インターネットを通じた情報へのアクセスと引用も迅速で、関連情報を瞬時に調べられます。

また、長編作品では、アウトラインプロセッサなどを活用した視覚的な整理と構成が思考の全体像を把握するのに役立ちます。タイピングに慣れていれば、執筆速度の向上により、思考のスピードに合わせて文章を紡ぎ出すことができ、ひらめきを逃さず一気に書き上げることが可能です。共同執筆の場合も、デジタルデータであれば共有と編集が容易で、効率的な作業が実現します。

 


AIとの共同執筆:新たな創造性の「鉱脈」

「物語世界の拡張」は、大きな鉱脈となる(イメージ)

そして、コンピュータの進化の延長線上にあるのが、AIとの共同執筆です。これは単に執筆を効率化するだけでなく、全く新しい創造性の地平を切り拓く可能性を秘めています。

AIは学習した膨大なデータから、人間には思いつかないような言葉の組み合わせ、プロットの展開、キャラクターのアイデアなどを提示できます。これにより、作家はAIの提案から新たな着想を得て、自身の思考とAIの提案が融合する形で、より独創的な作品を生み出すことができるでしょう。AIの「奇抜さ」が、人間の「論理」や「感情」と結びつくことで、予測不能な面白さが生まれるのです。

特に大きな「鉱脈」となるのが、「物語世界の拡張」におけるAIの活用です。

例えば、「スター・ウォーズ」や「マーベル」、「ガンダム」といった広大な世界観を持つフランチャイズにおいて、AIは既存の膨大なデータを学習し、その世界のルールやトーンを深く理解できます。そして、設定の整合性を保ちながら、詳細な歴史、地理、社会構造、キャラクターのバックストーリー、未踏のプロットやサブプロットなどを無限に生成することが可能になります。これにより、クリエイターは一人では構築しきれないほどの緻密で壮大な物語世界を築き上げることができ、作品の「深み」「広がり」「説得力」を飛躍的に向上させることができます。

具体的に、AIが「ドラゴンボール」の続きのプロットを書くとしたら、こんなアイデアが出せるでしょう。

 


「ドラゴンボール」の続きのプロット案:新たな脅威と宇宙規模の試練

AIは、映画一本分のプロットを瞬時に生成する(イメージ)

平和な日々が続く地球。悟空たちは修行を続け、各々が日常を楽しんでいた。しかし、ある日、全宇宙を巻き込む未曾有のエネルギー異常が発生する。それは、これまで存在を知られていなかった宇宙の「裏側」に封印されていた、太古の破壊神にも匹敵する存在が目覚めかけた兆候だった。

この存在は、単なる強さだけでなく、対象の存在そのものを消滅させる「虚無の力」を持つ。ビルスやウイスさえも警戒するその力に対抗するため、悟空とベジータは、さらに高次元の修行を積むことを強いられる。

同時に、その脅威の目覚めに呼応するように、各宇宙に散らばる「虚無の力」を求める者たちや、その力を悪用しようとする新たな敵が台頭する。フリーザの残党や、新たなサイヤ人の生存者、あるいは全く新しい種族の戦士たちが絡み合い、宇宙規模のバトルロイヤルが勃発。

最終的に、悟空たちは、仲間との絆、そしてサイヤ人の更なる進化を超えた「全宇宙の調和」の境地に到達し、虚無の存在の完全な覚醒を阻止、あるいはその力を制御する新たな道を切り開くこととなる。その過程で、かつての敵が味方になったり、意外なキャラクターが鍵を握ったりといった展開も盛り込まれる。

 


このように、AIは既存の膨大なキャラクターや設定、これまでの物語のパターンを学習し、スケールを拡大しつつ、新たな脅威の質を導入し、既存キャラクターの活用と深化を図ることで、まさに映画やゲーム一本分の物語の骨子を瞬時に生み出すことができるのです。


 

期待と懸念の混在:世間のAIへの視線

しかし、AIがクリエイティブな分野に介入することに対して、世間ではまだまだ抵抗や複雑な感情が入り混じっているのが現状です。

特に多く見られるのが「人間のクリエイターの仕事が奪われる」という懸念です。AIの急速な進化と普及は、多くの人に未来への不安を抱かせます。著作権や倫理的な問題、AIが既存作品の模倣に過ぎないのではないかという批判も根強く、AIが画一的で凡庸な作品ばかりを生み出すのではないかという懸念もあります。また、芸術や創作は人間の「魂」が込められるものという根源的な信念から、AIが作った作品に「人間味がない」「冷たい」と感じる声も少なくありません。

しかし、これらの懸念の多くは、AIの能力や役割に対する「偏見」に起因している部分も大きいと言えます。AIは、クリエイターの仕事を「完全に奪う」のではなく、むしろ「仕事のあり方を変え、特定の業務を代替し、人間の創造性を補助する」ツールとしての側面が強いのです。

 


止められない歴史の潮流:コンテナの発明のように

AIは、既存の業界構造を変革する(イメージ)

このAIの流れは、かつての「コンテナ」の発明と普及になぞらえることができます。

1950年代に考案された海上輸送用コンテナは、それまでの手作業中心の物流業界に劇的な効率化をもたらしました。これは、港湾労働者の仕事を奪い、当初は激しい抵抗に遭いましたが、結果的には輸送コストを劇的に引き下げ、グローバルな貿易を加速させ、世界経済全体を大きく発展させました。古い仕事が失われた一方で、より高度で効率的な物流管理や、国際貿易に関わる新たな仕事が生まれたのです。

AIもコンテナと同様に、効率化、コスト削減、そして新たな価値創造という点で、既存の業界構造を変革する力を持っています。この流れは、一部の職種を代替する可能性はあっても、社会全体の生産性向上や、これまで不可能だったクリエイティブな可能性を解き放つ側面があるため、もはや止めることはできません。

大切なのは、AIを「脅威」として排除しようとするのではなく、「いかに活用し、人間独自の価値をさらに高めるか」という視点を持つことです。手書きにこだわる作家の深い思考プロセスも、AIと共同執筆する作家の無限の想像力も、どちらも現代の創作の多様な形であり、未来の可能性を秘めていると言えるでしょう。