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【ユニクロ品質論争】生地は本当に薄くなった?値上げの実態と世界3位の秘密

ユニクロ「世界第3位」のグローバルな成功(イメージ)

「ユニクロの服、なんだか生地が薄くなった?」「昔より質が落ちた気がする」──こんなSNSでの声を目にしたり、耳にしたりしたことはありませんか?一方で、ユニクロはグローバルで驚異的な成長を遂げ、海外での評価も高まっています。この「ユニクロ劣化」を巡る疑問の真相はどこにあるのでしょうか。

本記事では、この問いに答えるべく、ユニクロへの直接取材結果からアパレル業界の専門家の見解、そして国内外の市場での立ち位置まで、多角的に掘り下げていきます。

 


「生地が薄くなった?」は本当か?ユニクロの公式見解

まず、SNSなどで頻繁に指摘される「生地が薄くなった」という声について、ユニクロのマーケティング担当者は明確に否定しています。彼らによると、物価高の影響で商品の生地の厚さを変更するなどの対応は一切行っていないとのことです。

では、なぜ多くの消費者が「薄くなった」と感じるのでしょうか。考えられる要因としては、消費者の感覚や、過去の製品と現在の製品を比較した際の記憶のずれ、あるいは別の理由が隠されているのかもしれません。

 


「素材の劣化」は誤解?専門家が語る品質の真実

「素材のユニクロ」とまで言われた品質が本当に落ちたのか、という疑問に対しては、ファッションバイヤーのMB氏が興味深い見解を示しています。MB氏によると、一部の消費者が「耐久性が低下した」と感じている一方で、ユニクロの素材の品質自体はむしろ向上しているというのです。

その背景には、ユニクロがカシミヤ、ウール、セルビッジデニム、リネンといった、より高級で繊細な素材を積極的に採用していることがあります。これらのプレミアム素材は、ポリエステルや厚手の綿といった耐久性の高い素材に比べてデリケートであり、毛玉ができやすい、伸びやすい、手入れが必要といった特性があります。

つまり、消費者が感じる「劣化」は、「丈夫で手頃」という従来のユニクロのイメージから、より「高品質だがデリケート」な素材へとシフトしたことによる、品質に対する認識の変化である可能性が高いのです。

 


「丈夫で手頃」はもう目指さない?変化するユニクロのポジショニング

では、ユニクロはかつて「丈夫で手頃」という強みで多くの支持を得てきましたが、この目標はもう目指していないのでしょうか。

結論から言えば、ユニクロは現在も「LifeWear(究極の普段着)」というコンセプトのもと、高品質で機能的、そして普遍的な服を「適正価格」で提供するという基本的なブランド戦略を維持しています。ヒートテックやエアリズムに代表される機能性素材への投資も継続しており、「長く着られる服」という点で耐久性も重視されています。

しかし、前述の素材の高級化からもわかるように、その「丈夫さ」や「手頃さ」の定義が、時代とともに進化しているとも言えます。単に頑丈なだけでなく、より快適で上質な着心地を提供することも「品質」の一部と捉えているのでしょう。

 


変わる価格戦略:上昇するユニクロ製品の値段

そして、消費者が最も体感している変化の一つが、ユニクロ製品の価格上昇でしょう。近年、多くの定番商品で値上げが実施されています。

この値上げには、主に以下の理由が挙げられます。

  • 原材料費・物流費の高騰: コットンやウールなどの素材価格、そして輸送費が世界的に高騰しています。

  • 円安の影響: 海外で生産される製品が多いため、円安は輸入コストを大きく押し上げます。

  • 人件費の上昇: 生産国での人件費も上昇傾向にあります。

  • 品質維持・向上へのこだわり: 「価格を維持するために品質を犠牲にする選択肢はない」というユニクロの強い意思が、値上げという形で現れています。

  • サステナビリティへの投資: 環境に配慮した素材や生産プロセスへの取り組みも、コスト増の要因となっています。


値上げは受け入れられている?売り上げの現状

価格が上がっている中で、消費者はユニクロの製品を買い続けているのでしょうか?

ファーストリテイリング(ユニクロの親会社)の連結業績を見ると、全体としては増収増益の傾向が続いており、値上げは概ね市場に受け入れられていると言えます。特に海外ユニクロ事業が売上・利益を大きく牽引しており、客単価も上昇傾向にあります。これは、消費者が値上げされた商品を購入していることを意味し、ユニクロの提供する価値に対して対価を支払うことを許容していると見ることができます。

しかし、国内事業では客数が伸び悩む時期があったり、暖冬などの天候要因で売上が一時的に落ち込むこともあります。消費者は値上げを全面的に歓迎しているわけではなく、品質や提供される価値に見合っているか、より厳しく判断している状況にあると言えるでしょう。

 


価格競争の行方:「GU」だけじゃないユニクロの競合

アパレル業界全体での価格競争は激しく、ユニクロの競合は同系列のGUだけではありません。

  • GU: ファーストリテイリングの「フランカー・ブランド」として、ユニクロよりさらに低価格でトレンド商品を展開し、価格に敏感な層や若年層をカバーしています。

  • H&M、ZARA: 最新トレンドを高速で提供するファストファッションの代表格です。ユニクロはファッション性やスピードでは劣るものの、ベーシックで長く着られる服、機能性、品質で差別化しています。

  • しまむら、無印良品: しまむらは国内で圧倒的なローコスト戦略と店舗数を誇り、無印良品はシンプルで良い素材という点で共通しますが、ライフスタイル全体を提案します。

ユニクロは、これらの競合に対して単に「価格の安さ」だけで戦うのではなく、「高品質」「高機能」「ベーシックデザイン」「適正価格」という複数の軸で差別化を図ることで独自のポジションを確立しています。


店舗数から見る存在感:日本、そして世界

店舗数で見ると、ユニクロ、しまむら、無印良品はそれぞれ以下のような規模を持っています。

  • ユニクロ: 国内約800店舗、海外約1,700店舗で、グローバル合計約2,500店舗。海外、特に中国での出店が加速しています。

  • しまむら: 国内・海外合計で約2,200店舗(しまむらグループ全体)。主に国内の郊外に強固な基盤を持ちます。

  • 無印良品: 国内約620~650店舗、海外約680~700店舗で、グローバル合計約1,300~1,400店舗。海外展開も積極的です。

グローバル全体ではユニクロが最も多くの店舗を展開しており、海外での成長が顕著です。

 


ユニクロの成長を牽引する巨大市場:中国での成功と挑戦

ユニクロのグローバルな成功、特に「世界第3位」という地位を確立する上で、中国市場の貢献は最も決定的でした。中国はユニクロにとって、長らく日本に次ぐ、あるいはそれ以上の売上と利益をもたらす最大の海外市場です。

成功の要因:

  • 高品質とコストパフォーマンスへの強いニーズ: 経済成長に伴い、中国の消費者は「安かろう悪かろう」から脱却し、品質と価格のバランスを重視するようになりました。ユニクロの「しっかりした生地で丁寧な縫製」は、このニーズに合致しました。

  • 機能性への評価: ヒートテックやエアリズムといった、生活の快適性を高める機能性商品が、高い評価を得ました。

  • ベーシックとサービス: トレンドよりも普遍的なデザインと、日本流のきめ細やかなサービスは、中国の消費者にも新鮮に受け入れられました。

  • 積極的な出店とデジタル戦略: 大都市から地方都市まで広範な店舗網を築き、WeChatなどの独自プラットフォームを駆使したデジタルマーケティング戦略が、新規顧客獲得とブランド浸透に成功しました。

直近の課題と今後の戦略:

しかし、近年は中国本土での消費意欲の減退や、地域ごとのニーズの多様化、そして地政学的リスクといった新たな課題にも直面しています。これに対し、ユニクロは「個店経営戦略」への転換を進めています。これは、各店舗が地域の顧客ニーズに合わせて商品展開や売り場づくりを自律的に行い、よりきめ細やかに対応することで、再成長を目指すものです。中国市場は、今後もユニクロのグローバル戦略の要であり続けるでしょう。


欧米市場での挑戦と「世界3位」の凄み

ユニクロがZARAやH&Mといった地元に根差した巨人がひしめくヨーロッパ市場でも、近年目覚ましい成長を遂げている点は注目に値します。初期の苦戦を乗り越え、現在はファーストリテイリンググループ内で「ダントツの成長率」を誇っています。

  • 「LifeWear」コンセプトの浸透: ヨーロッパの消費者が重視する、流行に左右されない高品質で機能的な服という価値観とユニクロのコンセプトが強く共鳴しました。

  • 旗艦店の成功とECの成長: ロンドンやパリなどの主要都市の旗艦店は高い集客力を持ち、EC事業の成長もブランド認知度向上に貢献しています。

  • 若年層への浸透: SNSなどを通じて、特に若い世代からの支持が急速に高まっています。

ユニクロ(ファーストリテイリング)は、中国市場での圧倒的な成功を最大の原動力として、そして欧米市場での着実な成長を背景に、売上高で見るとZARAを擁するInditex、H&Mに次ぐ「世界第3位」のアパレル企業にまで成長しました。

この「世界3位」という地位は、日本のブランドがグローバルな舞台で、ZARAやH&Mといった長年の強豪と肩を並べる存在になったという点で、非常に「すごい」ことと言えます。ヨーロッパでの市場シェアはまだ0.5%未満ですが、これは裏を返せば、「まだまだ伸びる」大きな可能性を秘めていることを意味します。ユニクロは「高品質・高機能なベーシックウェア」という明確な差別化戦略で、高収益を上げながら堅実に成長できるポジションを確立することで、この厳しい競争を勝ち抜いています。

 


まとめ:「劣化」ではなく「進化」の途上にあるユニクロ

「ユニクロ劣化」という消費者の声は、素材の高級化に伴う品質の捉え方の変化や、価格上昇への心理的反応、そして一部の耐久性に関する個別の経験が合わさったものと考えられます。

しかし、全体として見れば、ユニクロは「品質を維持・向上させながら、より高い価値を提供する」という方向へ「進化」している段階にあると言えます。その進化は、国内市場での価格戦略の変化や、中国市場での圧倒的成功に支えられたグローバルでの躍進という形で現れており、世界のアパレル市場における確固たる地位を築きつつあります。

これからもユニクロが、変化する市場と消費者のニーズにどう応え、どんな「LifeWear」を提供していくのか、その動向から目が離せません。