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「一発屋」なのに困ってない?テレビから消えた芸人たちが稼ぎ続ける「したたかな戦略」

いわゆる「一発屋」(イメージ)

「一発屋」――この言葉を聞くと、多くの人は「一時的に大ブレイクしたけれど、テレビからめっきり姿を消してしまった芸人さん」「今はどうしているのだろう?」と、少しばかりの心配と共に記憶されているかもしれません。しかし、驚くべきことに、多くの「一発屋」芸人たちは、決してその後の生活に困窮しているわけではない、という事実をご存じでしょうか。

むしろ彼らは、一度掴んだ知名度という「強力な武器」を最大限に活用し、変化の激しいエンターテインメント業界で、あるいは全く別の世界で、独自の「したたかな生き様」を確立しています。その秘密を、具体的な事例と共に深掘りしていきましょう。

 


1. 黄金期の「賢い守り」:ブーム時の堅実な金銭感覚と投資戦略

お笑い芸人として爆発的な人気を得た際、想像を絶するような高額なギャラが舞い込むことがあります。この「バブル期」にどう振る舞うかが、その後の人生を大きく左右する分かれ道です。多くの「一発屋成功者」は、この一時的な富に浮かれることなく、将来を見据えた堅実な金銭感覚冷静な投資戦略を持っていました。彼らは、芸能界の厳しさや人気の浮き沈みの激しさを肌で知っているからこそ、目先の贅沢に走らず、将来のための備えを怠りませんでした。

  • コウメ太夫: 「チクショー!」のフレーズと、唯一無二の白塗りキャラクターで一世を風靡したコウメ太夫さんは、まさにこの「賢い守り」を実践した代表例です。ブレイク中に得た収入を元手に、東京都内に複数のアパートを購入し、その家賃収入を生活の柱としていると公言しています。テレビの露出が激減しても、不動産という手堅い資産からの安定した不労所得があるため、経済的な心配とは無縁の生活を送っています。彼の飄々としたキャラクターとのギャップが、この堅実さをより際立たせています。


2. 知名度を「資本」に変える:多角的な露出戦略

一度でも全国的な知名度を獲得したという事実は、彼らにとって決して消えることのない大きな「資本」となります。テレビのゴールデンタイムから姿を消したとしても、その「顔」や「ギャグ」を覚えている人々がいる限り、活躍の場は無限に広がっています。彼らは、この「知名度」という唯一無二の武器を最大限に活かし、独自のポジションを確立しています。

2.1. 地域に根差す「営業」のプロフェッショナルたち

テレビでは見かけなくても、全国各地のショッピングモール、企業イベント、学園祭など、彼らのニーズは常に存在します。馴染みのある顔と、一度は誰もが耳にしたギャグは、老若男女問わず会場を盛り上げる鉄板ネタとなり、安定した収入源となります。

  • テツandトモ: 「なんでだろう~」の歌ネタで一世を風靡したテツandトモは、「営業の神様」と称されるほど、地方営業の第一人者として知られています。彼らのネタは、歌と踊り、そして誰もが共感できる「あるある」の問いかけが特徴で、子供からお年寄りまで幅広い層に受け入れられます。年間数百本もの営業をこなし、年末年始の忘年会・新年会シーズンには多忙を極めるなど、その安定した収入は目を見張るものがあります。

  • ジョイマン: 「ナナナナー」のリズムネタで人気を博したジョイマンも、近年SNSで再ブレイクを果たしましたが、以前から地方営業では絶大な人気を誇っていました。彼らのネタのシンプルな中毒性と、観客を巻き込むリズム感がイベントでは大人気で、吉本興業の営業ランキングでも常に上位に名を連ねています。そのフットワークの軽さと、会場を盛り上げる確かな実力で、全国のイベント関係者から厚い信頼を得ています。

  • ムーディ勝山: 「右から来たものを左へ受け流す~」の歌ネタでブレイクしたムーディ勝山さんも、テレビでの全国的な露出は減りましたが、関西を中心とした地方ローカル番組のレギュラーを複数持ち、「地方売れっ子」としての地位を確立しています。その親しみやすいキャラクターと、過去のブレイクネタが、地域に密着したイベントや番組で高く評価され、安定した収入源となっています。

2.2. 特定層に響くニッチな市場:パチンコ・パチスロ関連イベント

全国に多数存在するパチンコ・パチスロホールは、集客のためにタレントを呼ぶ文化が根強く、このニッチな市場も「一発屋」芸人にとって非常に安定した収入源となります。

  • ペナルティ・ワッキー: お笑いコンビ・ペナルティのワッキーさんは、その明るいキャラクターと、パチンコ・パチスロへの情熱で、この分野のイベントに引っ張りだこです。彼の豪快なリアクションや、ファンとのフレンドリーな交流は、来店客に大きな人気を博しており、テレビ露出が減っても安定した仕事を得ています。

  • デンジャラス・ノッチ: オバマ大統領のモノマネで一時期脚光を浴びたノッチさんも、その後はパチンコ・パチスロ関連イベントの常連として知られています。自身のキャラクターと、パチンコ・パチスロ愛好家ならではの深い知識を活かして、イベントを盛り上げ、多くのファンから支持されています。

  • オモロー山下(元ジャリズム): 「オモロー山下」としてピン芸人としても活動していた彼は、パチンコ・パチスロ業界でのプロデュース業にも深く関わっています。自身が企画するイベントに他の芸人を連れて全国のホールを回るなど、この分野における彼のネットワークと影響力は非常に大きいとされています。

2.3. デジタル時代の新たな「舞台」:YouTubeやSNSでの活躍

インターネットとSNSの普及は、「一発屋」芸人にとってまさに「再ブレイク」のチャンスの宝庫となりました。テレビの制約を受けずに自由にコンテンツを発信し、新たなファン層を獲得することで、直接的な収益や新たな仕事に繋げています。

  • ヒロシ: 「ヒロシです…」の自虐ネタで大ブレイク後、一時はメディアから姿を消しましたが、自身の趣味であるソロキャンプをテーマにしたYouTubeチャンネル「ヒロシちゃんねる」が爆発的な人気を博しました。彼の独特のゆるい雰囲気と、美しい自然の中で淡々とキャンプを楽しむ姿が、多くの視聴者の心を掴みました。YouTubeの広告収入はもちろん、そこから派生したキャンプ関連の書籍出版やグッズプロデュースなど、YouTubeでの成功が「再ブレイク」の最大の要因となりました。

  • なかやまきんに君: 「ヤー!」「パワー!」のギャグや筋肉ネタでブレイク後、アメリカ留学などで一時的にメディア露出が減りました。しかし、自身のYouTubeチャンネル「ザ・きんにくTV 【The Muscle TV】」で筋トレの専門知識と、お決まりのギャグを融合させたエンターテインメント性の高いコンテンツを配信。フィットネスブームも相まって人気が再燃し、今やCMやテレビ番組にも引っ張りだこになるなど、ブレイク時以上の活躍を見せています。

  • 小島よしお: 「そんなの関係ねぇ!」のギャグで人気者になった小島よしおさんは、近年YouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」で、子供向けの教育系コンテンツを展開し、これが大ヒット。彼の明るく分かりやすい教え方が、親御さんや子供たちに絶大な支持を得て、YouTubeでの人気が、テレビでの教育番組出演やイベントへのオファーにも繋がっています。

  • ゴー☆ジャス: 「君のハートにレボ☆リューション!」の決め台詞でおなじみのゴー☆ジャスさんは、テレビ露出が激減した後、ゲーム実況YouTuberとして独自の地位を確立しました。彼のYouTubeチャンネルでは、ゲームアプリのプロモーション案件を多数獲得しており、YouTubeが主な収入源となっています。彼の独特な世界観と軽妙なトークは、ゲーム好きの層に深く響き、安定したファンベースを築いています。


3. 「芸人」の枠を超えて:多様なセカンドキャリアの開拓

お笑い芸人という枠にとらわれず、自身の経験やスキル、人脈、あるいは全く新しい分野に挑戦し、安定したセカンドキャリアを築く芸人さんも少なくありません。彼らが芸能活動で培った度胸やトーク力、プレゼン能力などは、意外なほど一般社会で通用する「武器」となるのです。

3.1. 経験を「知」に変える:書籍出版・講演活動

自身の「一発屋」としての経験、成功と挫折、そしてそこから得た教訓などは、多くの人にとって興味深く、学びとなる「知」のコンテンツとなり得ます。これを書籍や講演という形で発信することで、新たな収入源と社会的な評価を得ることができます。

  • 髭男爵・山田ルイ53世: 「ルネッサ~ンス!」のギャグでブレイク後、テレビの露出は激減しましたが、彼は自身の「一発屋」としての経験を深掘りした著書『一発屋芸人列伝』を出版し、大ベストセラーとなりました。この本で彼は「一発屋研究家」という独自のポジションを確立し、多くのメディアからのオファーや講演会の依頼が殺到。自らの境遇を客観的に分析し、考察する知的な側面が、新たな価値を生み出しました。

  • 鉄拳: パラパラ漫画「振り子」で世界的な評価を受け、再ブレイクを果たした鉄拳さんも、テレビでの露出が落ち着いていた時期に、この新たな表現方法を確立し、書籍化や個展開催、さらには国内外での講演活動を行っています。「振り子」が持つ普遍的なメッセージ性は、教育現場などでも取り上げられ、幅広い層に影響を与えました。

3.2. 芸能界の「縁の下の力持ち」:裏方・制作業

芸人として培ったネタ作り、ステージング、企画力、そしてお笑いに対する深い洞察力は、芸能界の裏方で非常に重宝されるスキルです。表舞台から裏方に回ることで、安定した収入と、業界への貢献を両立させています。

  • 元「チャイルドマシーン」樅野太紀(もみの・ひろき): かつて人気を博したお笑いコンビ「チャイルドマシーン」のメンバーでしたが、解散後は芸人活動と並行して構成作家としての活動を本格化。現在では『アメトーーク!』など数多くの人気バラエティ番組や、若手芸人のネタ作り、ライブの構成などを手掛けるベテラン作家として、業界内で確固たる地位を築いています。

  • 大谷ノブ彦(ダイノジ): エアギターでM-1グランプリの決勝に進出したコンビ「ダイノジ」のメンバーですが、現在は芸人業に加え、ラジオパーソナリティとしての才能が高く評価され、自身が担当するラジオ番組では企画・構成にも深く関与しています。また、DJ活動も精力的に行い、音楽イベントのプロデュースなど、芸人業から派生した制作・企画職として活躍しています。

3.3. 安定を求める「社会人」への転身:一般企業への就職・転職

芸能界の不安定さから離れ、一般的な企業に就職する選択肢も、多くの芸人さんが選択しています。彼らが芸能活動で培った度胸やトーク力、プレゼン能力などは、一般社会でも大いに役立つ「ビジネススキル」となります。

  • 松本康太(レギュラー): 「あるある探検隊」で一躍有名になった松本康太さんは、現在、障害のある方の就職支援を行う企業「LITALICOワークス」でインタビューアーとして勤務していることを公表しています。芸人としてのコミュニケーション能力や、人前で話す度胸が、企業での営業や支援の現場で活かされており、安定した収入と社会貢献を両立させています。

  • 井上 マー(元「ワンダラーズ」): かつてお笑いコンビ「ワンダラーズ」として活動し、バラエティ番組にも出演していましたが、解散後、一般企業に就職しました。現在は不動産会社に勤務しており、その後のキャリアがメディアで紹介されることもあります。彼のトーク力や、人懐っこいキャラクターが、営業職として顧客との信頼関係構築に役立っているそうです。

  • オキシジェン・三好博道: お笑いコンビ「オキシジェン」として活動していましたが、芸人を引退し、大手生命保険会社に就職しました。トップセールスマンとして活躍し、その成功がメディアでも取り上げられたことがあります。芸人時代に培ったコミュニケーションスキルやプレゼン能力が、営業の現場で大いに活かされていると報じられています。


「一発屋」を超越した「伝説」の存在:ダンディ坂野

そして、この「一発屋」を語る上で、ダンディ坂野さんの存在は欠かせません。彼はまさに「一発屋」という言葉の概念そのものをポジティブに昇華させ、「一発屋レジェンド」としての地位を確立しました。

「ゲッツ!」のギャグで大ブレイクした後、テレビのゴールデンタイムからは姿を消しましたが、彼は「一発屋であること」を悲観せず、むしろ謙虚でサービス精神旺盛なキャラクターとして徹底しました。どんな場所で「ゲッツ!」を求められても応じるその姿勢は、多くの人々に愛され続けました。

彼は、地方営業のレジェンドであり、CM業界では「隠れた売れっ子」として継続的に起用され、その「一発屋なのに安定している」というギャップ自体が、唯一無二のブランド価値となっています。ダンディ坂野さんは、単なる「一発屋」の枠を超え、「一発屋"出身"の最高到達点」として、今もなお輝きを放ち続けているのです。彼の生き様は、まさに「一発の奇跡」を「永続的な成功」に変えた、エンターテインメント業界の生ける伝説と言えるでしょう。


結論:「一発屋」の真価は、その後の生き様にある

「一発屋」という言葉は、しばしば一時的な流行で終わってしまったかのような響きを持ちますが、ご紹介した芸人たちの例を見れば、それが決して「終わり」を意味するものではないことが分かります。

彼らは、突然訪れた脚光の中で得た経験と知名度を、決して無駄にしませんでした。むしろ、それを「自分だけのユニークな資本」と捉え、変化の激しい現代を生き抜くための燃料に変えてきたのです。

彼らは、

  • 一過性の成功に浮かれず、堅実に資産を守り、時には投資する金銭感覚。

  • 自身の「一発屋」というキャラクターをポジティブな武器として昇華させるしたたかさ。

  • テレビ以外の多様なニーズに応え、フットワーク軽く現場に赴くプロ意識。

  • 芸人という枠にとらわれず、新たなスキルを学び、異業種に飛び込む柔軟性。

これら全てを兼ね備えることで、「一発屋」というレッテルを「一発屋"出身"」という「勲章」に変え、それぞれのフィールドで輝き続ける「一発屋成功者」としての地位を確立しています。彼らの生き様は、予測不能な現代社会をたくましく生き抜くための、まさに「サバイバル術」のお手本と言えるでしょう。