Abtoyz Blog

最新のトレンドや話題のニュースなど、気になることを幅広く発信

【実践】デザイン会社が新規顧客を獲得するコールドメール営業術

デザインが企業の課題を解決(イメージ)

グラフィックデザイン制作会社の皆さん、新規顧客の獲得は常に大きな課題ですよね。自社のウェブサイトからの問い合わせ(インバウンド)も重要ですが、より積極的に、そして狙った企業にアプローチできるアウトバウンド営業も、事業成長には欠かせません。

中でも「コールドメール」や「フォーム営業」は、適切に行えば非常に効果的な手法です。しかし、「一方的な売り込みになってしまう」「なかなか返信が来ない」といった悩みも多いのではないでしょうか?

この記事では、単なるテンプレートではない、「企業の心に響き、返信を引き出すためのコールドメール/フォーム営業」の具体的かつ詳細なステップを解説します。特に、一般企業へのアプローチと、広告代理店や出版社といった同業・近しい業界へのアプローチ、それぞれのポイントを掘り下げてご紹介します。

なぜ今、グラフィックデザイン会社にコールドメール/フォーム営業が必要なのか?

ウェブサイトやSNSからの情報発信(インバウンド)は、潜在顧客からのプル型のアプローチを促します。しかし、それだけではリーチできない層や、まさに今デザインニーズを抱えている企業に、ピンポイントでアプローチするには限界があります。

コールドメール/フォーム営業は、以下のメリットがあります。

  • ターゲット選定の自由度: 自社の得意分野や獲得したい案件に合わせ、戦略的にターゲット企業を選べます。
  • ダイレクトなアプローチ: 企業の担当者に直接メッセージを届けられます。
  • タイミングへの対応: 企業のニュースリリースなどからデザインニーズを察知し、タイムリーにアプローチできます。

ただし、成功させるには「一方的な売り込み」ではなく、「相手企業への理解に基づいた価値提案」である必要があります。

実践編①:一般企業へのコールドメール/フォーム営業

デザイン業務を外部に発注する可能性がある一般企業へのアプローチです。企業の「課題解決」に焦点を当てたメッセージングが鍵となります。

ステップ1:徹底的なターゲットリサーチ

送る相手を知らなければ、響くメッセージは書けません。以下の点を徹底的にリサーチします。

  • ターゲット企業の事業内容・ビジネスモデル: どのような商品・サービスを展開し、誰に、どのように提供しているのか?
  • ウェブサイトの現状: デザインは洗練されているか? 情報は整理されているか? 最終更新日は? 古い印象がないか?
  • 最近のニュース・プレスリリース: 新商品発売、サービスリニューアル、イベント開催、資金調達、上場準備など、デザインニーズが生まれそうな動きはないか?
  • 企業の抱えるであろう課題や目標:
    • ブランドイメージを向上させたい(リブランディングの可能性)。
    • 新しいターゲット層にアプローチしたい。
    • 競合との差別化を図りたい。
    • 採用活動を強化したい。
    • 特定の販促物(会社案内、パンフレット、パッケージ)を改善したい、新しく作りたい。
  • デザイン発注の決定権を持つ可能性のある人物:
    • 役職名(代表取締役、マーケティング部長、広報部長、商品企画担当者など)を特定します。
    • 企業のウェブサイトの会社概要や「お問い合わせ」、LinkedInなどで担当者名を特定できると、よりパーソナルなアプローチが可能です。

ステップ2:心を掴むパーソナライズドメッセージの作成

テンプレートを使い回すのはNGです。リサーチに基づき、1通1通カスタマイズします。

  • 件名:開封率が全てを決める
    • 【要点】「誰から」「誰へ」「何について」「どんなメリット」があるか、簡潔に伝える
    • 例:「〇〇株式会社様:貴社△△事業のブランディング向上に向けたデザインご提案」(企業名、事業、提案内容)
    • 例:「拝見いたしました:貴社ウェブサイトの第一印象を向上させるデザインの視点」(関心を示し、具体的な対象に触れる)
    • 例:「【〇〇業界向け】売上アップに貢献するデザイン戦略のご提案」(業界を絞り、具体的なメリット)
    • 一方的な「サービス紹介」や「ご提案」といった件名は避けましょう。
  • 宛名:担当者名で送るのが基本
    • 特定できた担当者名で。「〇〇株式会社 △△様」
    • 担当者名不明の場合:「〇〇株式会社 マーケティングご担当者様」など、部署名を入れる。
  • 導入部分:なぜあなたに連絡したのかを明確に
    • リサーチで得た情報に触れ、なぜその企業に関心を持ったのか、なぜ連絡したのかを具体的に述べます。
    • 「貴社のウェブサイトを拝見し、〇〇の事業展開に大変感銘を受けました。」
    • 「最近の貴社の△△(新製品など)に関するニュースリリースを拝見し、デザインの観点からお手伝いできることがあるのではないかと感じ、ご連絡いたしました。」
    • いきなり自社紹介はせず、まずは相手企業への理解と敬意を示します。
  • 課題提起と共感:企業の立場に寄り添う
    • リサーチで推測した企業の課題やデザインニーズに触れ、共感を示します。
    • 「貴社のような成長企業様にとって、顧客への一貫したブランドメッセージ伝達は非常に重要かと存じます。」
    • 「新しいターゲット層を獲得するためには、既存の△△(制作物)のデザインを見直すことで、より効果的なアプローチが可能になるかと推察いたします。」
  • 自社の提供価値(ソリューション):デザインでどう貢献できるか具体的に
    • 提起した課題に対し、自社のデザインスキルや実績がどのように役立つのかを具体的に、分かりやすく説明します。
    • 【重要】「デザインができます」ではなく、「デザインによって課題をどう解決できるか」を伝える
    • 例:「弊社の〇〇(得意なデザイン分野)は、貴社の△△という課題に対し、ブランド信頼性の向上や、新しい顧客層へのリーチといった効果をもたらすことが可能です。」
    • 例:「過去に似たような課題を抱えていた〇〇業界の企業様に対し、弊社のウェブサイトデザイン改修により、問い合わせ数を△△%増加させた実績がございます。」
    • 具体的な事例や可能であれば数字を示すと、説得力が増します。
  • ポートフォリオ/関連情報の提示:
    • メッセージ内容に関連性の高いポートフォリオページへのリンクを貼ります。
    • 自社ウェブサイトのURLも必ず記載します。
  • Call to Action (次のステップ):相手に求める行動を明確に
    • 何を求めているのか、相手にどのような行動を取ってほしいのかを明確に示します。
    • 例:「もしよろしければ、弊社のポートフォリオをご覧いただけますでしょうか?」
    • 例:「貴社の△△(課題)について、デザインの観点から簡単な無料診断をご提供可能ですが、ご興味ありますでしょうか?」
    • 例:「貴社のウェブサイトのデザインについて、15分ほどお電話にてお話しする機会をいただけませんでしょうか?」
    • 具体的な時間や形式(電話、オンラインミーティングなど)を示すと、相手は応じやすくなります。
  • 署名:信頼性のために正確に
    • 会社名、氏名、役職、電話番号、メールアドレス、会社ウェブサイトURLなどを正確に記載します。

ステップ3:送信と効果測定

  • 送信タイミング: ターゲット企業の営業時間内、特にメールをチェックしやすい時間帯(午前中や午後の早い時間)を選びます。
  • フォーム営業の場合: 企業の問い合わせフォームの入力項目に合わせて、メッセージを調整します。ファイル添付ができない場合もあるため、ポートフォリオはURLで共有できるようにします。
  • 送信記録: 誰に、いつ、どのような内容を送ったかを必ず記録し、その後の対応に役立てます。スプレッドシートやCRMツールなどを活用します。

ステップ4:丁寧なフォローアップ

  • 初回送信から数日〜1週間程度を目安に、返信がない場合にフォローアップメールを送ります。
  • 件名に「【再送】」などを付け、初回メールの内容を簡潔に再度提示します。
  • 「先日〇〇の件でご連絡差し上げましたが、ご確認いただけましたでしょうか? ご多忙の折恐縮ですが、もしご興味おありでしたら、短時間でもお話しする機会を頂戴できれば幸いです。」といった丁寧な文章を心がけます。
  • 過度なフォローアップは逆効果です。1〜2回程度に留めるのが賢明です。

実践編②:同業界・近しい業界へのコールドメール/フォーム営業

広告代理店、出版社、印刷会社などへのアプローチは、単なる「下請け」ではなく、「協業」「パートナーシップ」の視点が不可欠です。

ステップ1:協業視点でのターゲットリサーチ

相手はデザインのプロであるか、デザインを発注することに慣れています。提供できる価値を明確に理解することが重要です。

  • ターゲット企業の得意分野・苦手分野: どのようなクリエイティブに強いか? イラスト、UI/UX、複雑なDTP、動画など、内製で対応しきれていない、あるいは外部パートナーに依頼している領域はないか?
  • プロジェクトの受注規模・頻度: 常に制作リソースが逼迫している企業か? 特定の時期だけ忙しくなるか?
  • 過去の協業実績: どのようなデザイン会社やフリーランサーと組んでいるか?
  • 新たな事業展開やクライアントからの要望: これまで手掛けていなかった分野のデザインニーズが生まれていないか?

ステップ2:協業メリットを提示するメッセージ作成

「貴社に協力することで、貴社とその先のクライアントにどのようなメリットを提供できるか」を言語化します。

  • 件名:協業・連携を明確に
    • 【要点】「誰から」「誰へ」「どのような協業の可能性」があるかを示す
    • 例:「〇〇株式会社様:制作リソース強化に向けたデザイン協業のご提案」
    • 例:「貴社△△案件におけるデザインパートナーシップのご相談(貴社名より)」
    • 例:「【出版社様向け】エディトリアルデザインの外注パートナー候補のご提案」
  • 導入部分:関心と、なぜ連携を考えたのか
    • 相手企業の最近の活動や実績に触れ、敬意を示します。
    • 「貴社の〇〇に関するクリエイティブを拝見し、素晴らしい取り組みだと感じております。」
    • 「貴社の△△事業についてウェブサイトで拝見し、弊社のデザインスキルが制作リソース面でお役に立てるのではないかと考え、ご連絡いたしました。」
  • 協業による具体的なメリットの提示:相手が得られる価値を明確に
    • ここが最も重要な差別化ポイントです。相手の状況を推測し、自社との連携で得られる具体的なメリットを提示します。
    • 【重要】「弊社が手伝えること」ではなく、「弊社と組むことで貴社が得られるメリット」を伝える
    • 例:「繁忙期における急なデザインリソース不足を、弊社の柔軟な対応力で迅速に補填できます。」
    • 例:「貴社内でリソースが手薄になりがちな〇〇(特定のデザイン分野:例、イラストレーション、複雑なグラフデザインなど)について、専門性の高いサポートを提供し、制作品質の安定化に貢献できます。」
    • 例:「これまで手掛けたことのない分野(例:アニメーション、3Dデザインなど)の案件にも、弊社の協力により対応できるようになり、提案の幅を広げられます。」
    • 例:「クライアントへの提案時に、弊社のデザインスキルを連携させることで、より強力なクリエイティブ提案が可能になります。」
    • コスト効率や納期の厳守といった、パートナーとして信頼できる要素も盛り込みます。
  • 自社の具体的なケイパビリティ:連携に必要な情報を簡潔に
    • どのようなデザイン業務が可能か、使用ツール、対応できるファイル形式など、連携する上で必要な情報を簡潔に提示します。
    • ポートフォリオへのリンクは必須です。協業相手はデザインのプロなので、質の高いポートフォリオが最も重要です。
  • Call to Action (次のステップ):協業の可能性を探る提案
    • まずは短時間で情報交換や、自社の実績紹介の機会を設けることを提案します。
    • 例:「貴社の今後の制作体制において、弊社のデザインリソースがお役に立てる可能性があるか、一度情報交換のお時間をいただけないでしょうか?」
    • 例:「弊社の得意分野について、改めてポートフォリオを詳しくご紹介させていただく機会を頂戴できれば幸いです。」
  • 署名:連絡先と共に
    • 会社名、氏名、役職、連絡先、ウェブサイトなどを記載します。「協業に関するお問い合わせもお待ちしております」といった一文を加えても良いでしょう。

ステップ3&4:送信・管理・フォローアップ

一般企業向けと同様ですが、より丁寧で、かつ専門用語を適切に使い分ける必要があります。

  • フォーム営業の場合: 企業の「協業」「パートナー募集」「外注」に関する窓口を探して連絡します。
  • フォローアップ: 協業の可能性は常に変動するため、すぐに反応がなくても、数ヶ月後に改めて企業の動きを見て連絡することも検討できます。ただし、丁寧な言葉遣いを心がけます。

成功のための共通の鍵

どちらのターゲットに向けたコールドメール/フォーム営業も、以下の点が成功を左右します。

  • 徹底したリサーチに基づく「パーソナライズ」: これが最も重要です。相手に「これは自分たちに向けられたメッセージだ」と感じてもらえるかどうかが、開封、そして返信に繋がります。
  • 一方的な「売り込み」ではなく「価値提案」: 自社が何を提供できるかだけでなく、それによって相手が何を得られるのか(課題解決、メリット)を明確に伝えます。
  • 高品質なポートフォリオ: デザイン会社の生命線です。メールやフォームで興味を持ってもらえたとしても、ポートフォリオの質が低ければそこで終了です。
  • 簡潔かつ分かりやすい文章: 忙しい担当者が短時間で内容を理解できるよう、要点を絞り、専門用語を避け、適切な改行や段落分けを行います。
  • 諦めない継続と改善: 一度で成功することは稀です。ターゲットリストの質、件名の付け方、本文の構成などを継続的に見直し、改善を続けることが重要です。
  • プロフェッショナルな姿勢: メールの文章だけでなく、誤字脱字がないか、添付ファイルやリンクに不備がないかなど、細部まで確認し、プロフェッショナルな印象を与えます。
  • 法規制の遵守: 特定電子メール法など、営業メールに関する法規制を遵守した上で送信します。

まとめ

グラフィックデザイン制作会社にとって、コールドメール/フォーム営業は、適切に戦略を立て実行することで、新たな顧客やビジネスパートナーとの出会いを創出できる強力なツールです。

一般企業向けには「課題解決」の視点、同業・近しい業界向けには「協業メリット」の視点を持ち、徹底的なリサーチに基づいたパーソナライズされたメッセージを作成することが成功の鍵となります。

ぜひ、この記事を参考に、貴社の新規営業活動にコールドメール/フォーム営業を取り入れ、事業拡大を目指してください。