背景と改革の流れ
2025年4月22日、石破首相はデジタル行財政改革会議の場で、公立高校入試の「単願制」を見直し、受験生が複数校を志望できる仕組みを検討するよう文部科学省とデジタル庁に指示しました。従来、多くの都道府県では公立高校を1校しか選べない体制が続いており、「挑戦したい難関校に出願できない」「安全志向でレベルを落とした学校を選ばざるを得ない」といった声が受験生や保護者から上がっていました。
一方、2025年度からは公立高校の授業料無償化が全国的に実施され、2026年度には私立高校も実質無償化の対象に。学費負担が軽くなるにつれて私立人気がさらに高まることへの歯止め策として、公立離れを防ぎつつ、よりフレキシブルに志望校を選べる制度をつくろうというのが今回の狙いです。
デジタル併願制とは何か
新たに提案されている「デジタル併願制」は、受験生が第1志望から第n志望まで複数の公立高校をオンラインシステムに入力し、一度の学力検査や内申点・面接結果をもとに、最も高い順位の学校に自動的に合格を割り当てる仕組みです。
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出願手続きの一本化
受験生は各校で別々に願書を提出したり、面接準備を分散させたりする手間が省けます。 -
マッチングシステムの活用
希望順位と成果点を組み合わせたアルゴリズムが、自動的に各校の合否を判定。受験生は結果発表まで安心して待つことができます。 -
海外事例の参考
ニューヨーク市の高校入試や全国の保育所入園調整で似た方式が導入されており、マッチング制度による公正性と効率性が一定の成果を挙げています。
受験生に嬉しい4つのポイント
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挑戦機会の拡大
志望校を1校に絞らず、第1志望に挑戦しながら安全校も併願できるため、レベルの高い学校へのエントリーがしやすくなります。 -
精神的な安心感
合否判定はシステムが一括処理。万が一第1志望が不合格でも、他の志望校に自動的に振り分けられる仕組みなので、「併願不安」から解放されます。 -
試験準備の効率化
各校の個別試験を受ける必要がなくなるぶん、すべての勉強時間を共通検査や内申点アップに集中でき、学習プランを立てやすくなります。 -
学力向上への動機付け
難関校への挑戦が心理的に後押しされることで、日々の勉強へのモチベーションがアップ。競争環境が整うことで学力全体の底上げも期待できます。
教育現場と自治体へのメリット・懸念
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事務作業の簡素化
出願・集計・合否判定をオンラインで一括管理できるため、教育委員会や学校の事務負担が大幅に減少します。 -
導入コストとデジタル格差
システム構築や運用に向けた初期投資、教員や生徒のデジタルリテラシー整備は避けて通れません。通信環境が整っていない地域では追加サポートが必要です。 -
アルゴリズムの透明性
マッチング基準や優先順位のロジックが公開され、誰もが理解できる仕組みであることが信頼確保の鍵となります。
これからのステップ
まずは希望する自治体を対象にパイロット版を導入し、運用データをもとに課題を洗い出します。2025年度の公立無償化予算と、翌年度の私立無償化拡大を見据えて、全国展開のスケジュールが調整される見込みです。地方自治体や学校現場、保護者会などと連携しながら、デジタル庁の支援体制を強化しつつ、公平かつ透明性の高い入試制度への移行を目指していくでしょう。
公立高校入試の「単願制」見直しと「デジタル併願制」の導入は、受験生の選択肢を広げ、負担を軽減しつつ、教育現場の効率化も両立させる大きな一歩です。受験生・保護者・学校が一体となり、変革の波をチャンスに変えていきましょう。