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「ジブリはつまらなくなった?」最新作『君たちはどう生きるか』に見る賛否の真相

宮崎駿監督(イメージ)

 

スタジオジブリの宮崎駿監督が手がけた劇場版アニメ『君たちはどう生きるか』が、2025年5月2日(金)に日本テレビ系「金曜ロードショー」で初めてテレビ放送されることが発表されました。​このテレビ初放送は、ジブリ作品のファンにとって待望の機会となり、多くの視聴者が注目することが予想されます。

スタジオジブリは、1980年代から数々の名作を世に送り出し、日本のみならず世界中に多大な影響を与えてきました。『となりのトトロ』、『魔女の宅急便』、さらには『風の谷のナウシカ』など、温かみと独自の幻想世界を提示してきたその作品群は、いずれも「ジブリ=魔法」として語り継がれています。しかし、近年公開された最新作『君たちはどう生きるか』や、近作として評価される『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』といった作品は、これまでのジブリ作品と比べると、重厚で内省的なテーマや複雑な映像表現が特徴となっています。

ここで「本当にジブリはつまらなくなってきているのか?」という問いがファンや評論家の間で議論となっています。この記事では、初期作品が築いた輝かしい伝統と、現代の作品が追求する新たな美学・物語性―双方の側面から、多様な意見や評価を整理し、ジブリ作品の今を考察します。


1. 昔のジブリ:魔法が宿る原点の魅力

ジブリの初期作品は、そのシンプルな物語構造と手描きならではの温かみで、誰もが心に残る「魔法」を与えてくれました。

  • 『となりのトトロ』(1988年)は、家族で楽しめる普遍的なストーリーと、どこか郷愁を誘う風景描写により、多くの人々に安心感と親しみをもたらしました。

  • 『魔女の宅急便』(1989年)は、自立して成長する若き魔女キキの冒険を描き、若者のみならず幅広い世代に希望と活力を与えた作品です。

  • 『風の谷のナウシカ』(1984年)は、人間と自然、そして戦争後の再生をテーマに、壮大ながらも優しさを感じさせる物語が印象的でした。

これらの作品は、テレビ放送や家庭での鑑賞を通じ、世代を超えて愛され続ける「ジブリの魔法」として確固たる評価を築いてきました。視聴者は、シンプルでありながらも感動的な物語、細部に宿る温もり、そしてキャラクターたちの魅力に惹かれ、映画館やテレビでジブリ作品を求め続けています。


2. 近年のジブリ作品:内省的な美学と重厚なテーマへの挑戦

一方、宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』(2023年公開)は、初期のジブリ作品とは一線を画す大人向けのテーマを前面に打ち出しています。

  • 内面の葛藤と成長:
     本作では、母親の喪失や新たな環境への適応を通じ、主人公マヒトの内面的な成長や迷いが描かれています。現実と幻想が入り混じる独特の世界観は、従来の「家族で楽しむ魔法」から大人の視点にシフトし、個々の心の闇と再生を鮮明に映し出す仕上がりとなっています。

  • 映像表現の精緻さ:
     宮崎監督は、自身の長いキャリアを通じて磨かれてきた映像美を、IMAXやDolby Atmosなどの上映フォーマットなど最新の技術と手描きの温かみを融合させることで、より複雑で洗練されたビジュアルを実現しました。この結果、映画は国際映画祭でも高い評価を獲得し、Rotten TomatoesやMetacriticといった評価サイトでは非常に高い点数をマークしています。

このような新しいアプローチに対して、「昔のジブリ作品のようなわかりやすさや温かみがない」という批判も一部には見られます。しかし、国際的な批評家や一部の成熟したファンは、むしろ今のジブリ作品に込められた深い内省や複雑なテーマに高い評価を与えており、宮崎監督の個人性が色濃く反映された作品として賛美されています。


3. スタジオジブリの近作 ― 『かぐや姫の物語』と『思い出のマーニー』の示す可能性

近作として、『かぐや姫の物語』(2013年)と『思い出のマーニー』(2014年)は、初期のジブリ作品と比べると明確に異なる側面を持っています。

  • 『かぐや姫の物語』(高畑勲監督)は、竹取物語を原作とし、繊細な水彩画のような美しいビジュアルと、登場人物たちの内面に迫るストーリーテリングで、ジブリが従来のシンプルさを超えた大人向けの芸術性を提示した作品です。

  • 『思い出のマーニー』(米林宏昌監督)は、孤独と記憶、成長と再生をテーマに、静謐な雰囲気の中で物語が紡がれることで、視聴者に深い感情移入を促します。

両作品とも、かつてのジブリ作品が持つ「魔法」とは異なる、より内省的で芸術性の高い世界を提示しており、観る人に「理解しにくい」とも「新たな発見がある」とも評価されています。この進化は、ジブリが時代とともに変化する視聴者のニーズや、各作品の監督自身の内面的な変化を反映していると考えられます。


4. 「つまらなくなっている」という評価は本当か?

「本当にジブリはつまらなくなってきているのか?」という問いについて、多くの意見が交錯しています。

  • 懐古的な立場:
    一部のファンは、初期作品にあったシンプルで温かい魅力やわかりやすいストーリーが懐かしく、それが失われつつあると感じる傾向にあります。彼らにとっては、『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』のような作品が、心に残る「魔法」であり、深刻で重いテーマや複雑な物語構造は、当時のような気軽さを感じさせないと捉えられます。

  • 革新を評価する立場:
    一方で、海外の映画祭で高い評価を受ける映画評論家や、成熟した視聴者層は、宮崎駿監督が自らのキャリアを通して模索してきた内面的なテーマ、すなわち成長、喪失、再生といった普遍的な要素に光を当てた新たなアプローチを評価しています。『君たちはどう生きるか』は、その複雑さと美しさにより、従来のファンだけでなく、新しい世代の視聴者にも深い感動を与える力があると考えられており、その結果、国際評価は高水準を維持しています。

さらに、ジブリは『かぐや姫の物語』や『思い出のマーニー』などの近作を通じて、映画表現の幅を大きく広げ、従来の「わかりやすさ」に依存しない高度な芸術性を確立しています。つまり、ジブリが「つまらなくなっている」という主張は、ある意味で初期の懐古的なイメージに囚われた意見の一側面であるといえます。


5. まとめ ― 多様な評価が示すジブリの不変の魅力

事実として、スタジオジブリはこれまでの時代とともに変化し続けています。

  • 1980年代から90年代の初期作品は、家族で楽しめるシンプルで温かい「魔法」を提供し、多くの人々の記憶に深く刻まれました。

  • 現代の作品『君たちはどう生きるか』は、宮崎駿監督自身の経験や内面を反映し、内省的で複雑な物語と映像美を追求することで、新たな芸術的価値を示しています。

  • 近作として『かぐや姫の物語』や『思い出のマーニー』は、ジブリの伝統を踏襲しつつも大人向けの深いテーマと独自の表現で、多くの批評家や一部の視聴者から高い評価を受けています。

「本当にジブリはつまらなくなっているのか?」という問いに対しては、一概に「つまらなくなった」と断じることはできません。確かに、一部の懐古的なファンは初期作品のシンプルな魔法を恋しく感じるかもしれませんが、同時に現代のジブリ作品が提示する深い内省や新たな美学には、多くの批評家や新世代の視聴者が感動を覚えているのも事実です。

ジブリは常に変わりゆく時代の中で、異なる視点や感性に応じた多層的な映画体験を提供しています。初期作品のあたたかさと、近作が描く複雑で豊かな内面――その両面性こそが、ジブリが今もなお世界中の映画ファンに支持され続ける理由でしょう。

結論として、ジブリが「つまらなくなっている」と一概に判断するのではなく、むしろ時代とともにその表現が新たな方向へと進化し、多様な視点から評価される豊かな作品群を生み出し続けているといえます。これからも宮崎駿監督やスタジオジブリは、自らの伝統を踏襲しながらも、新たな挑戦を続け、様々な世代に向けた映画体験を提供していくことでしょう。