1. チームごとに異なる指導方針と保護者の悩み
少年野球に子どもを入れた親がまず驚くのは、チームごとに指導方針が大きく異なることです。「優しいコーチがいるチームもあれば、昭和の厳しい指導が残るチームもある。どのチームに入るかで野球の楽しみ方がまったく変わる」といった声をよく聞きます。
どんな指導者に出会うかで大きく変わる
指導者の考え方はチームによってバラバラです。最新のスポーツ科学を学び、子どもを伸ばそうと努力する指導者がいる一方で、「水を飲むな!」「とにかく声を出せ!」といった根性論を重視する指導者もいます。
また、「勝利至上主義」を掲げるチームでは、レギュラーの子どもばかりが試合に出て、補欠の子はほとんどベンチ。せっかく野球を始めたのに試合経験が積めず、やる気をなくす子どもも少なくありません。
コーチってどんな人が多いの?
少年野球のコーチは、主に以下のようなタイプに分かれます。
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熱心な教育者タイプ:スポーツ科学や子どもの成長に詳しく、一人ひとりの個性を尊重しながら指導する。
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厳格な昭和型指導者:根性論を重視し、昔ながらの「気合」「礼儀」「上下関係」を重視する。
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自分の経験重視型:自身のプレー経験を基に指導するが、最新の指導方法を学ばないことが多い。
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親が兼任するタイプ:選手の保護者がコーチを務めるが、経験や知識に差がある。
どのタイプのコーチに出会うかで、子どもが野球を楽しめるかどうかが大きく変わります。
過剰な親の負担
少年野球は、子どもだけの活動ではありません。実は、親の負担が非常に大きいのが特徴です。
① 試合の車出し
遠征試合があると、親が車を出して送迎するのが一般的です。試合会場が県をまたぐこともあり、朝5時に集合し、夜遅くに帰宅することも。親同士で交代することがあるとはいえ、ほぼ毎週末が遠征や試合で埋まり、家族の時間を確保するのが難しくなります。
② グラウンド整備と道具管理
練習後には、保護者がグラウンド整備を行います。土を均すトンボ掛け、水撒き、ベースの設置や撤去など、地道な作業が必要です。チームの備品(バット、ボール、防具など)の管理も保護者が分担して行い、持ち帰ってメンテナンスすることもあります。
③ お茶当番・差し入れの準備
炎天下の練習では、大量のスポーツドリンクや氷を用意するのが親の役目。加えて、試合時にはおにぎりや軽食を準備し、選手や指導者に配る文化が残るチームもあります。これにかかる費用や手間は決して小さくありません。
④ ユニフォームや用具の管理・手配
ユニフォームやスパイク、グローブなど、成長に合わせて頻繁に買い替えが必要です。さらに、チーム指定のジャージや帽子、バッグなどを揃えるとなると、初期費用だけで数万円かかることもあります。泥だらけになったユニフォームを毎週洗濯し、時には破れた箇所を縫い直す作業も親の負担になります。
⑤ 試合のスコア記録・写真撮影
試合のスコアをつけるのも保護者の役目。初心者の親はルールを学ぶ必要があり、最初はかなりの負担になります。また、試合の写真やビデオを撮影し、後で共有するのも親が担当することが多く、プレッシャーを感じる人もいます。
⑥ 保護者会や懇親会の負担
定期的に開かれる保護者会では、運営費の集金、役員選出、スケジュール調整などが話し合われます。意見の対立が生じることも多く、精神的なストレスを抱える親も少なくありません。さらに、チームによっては懇親会や祝勝会が頻繁に行われ、その都度費用がかかります。
⑦ 兄弟姉妹の負担と生活リズムの崩れ
野球をしている子の試合や練習に親がつきっきりになることで、兄弟姉妹が長時間待たされるケースもあります。移動が多いため、他の習い事をさせる時間が取れなかったり、生活リズムが乱れたりする家庭も少なくありません。
2. 「昭和型」野球論 VS 現代の価値観
未来の少年野球はどうなる?
時代の変化に対応し、保護者の負担を減らし、子どもが楽しめる環境を整えることができれば、少年野球の未来は明るいものになるはずです。
3. それでも少年野球やらせるのか?
ここまで見てきたように、少年野球には多くの課題が存在します。では、それでも子どもに野球をやらせる価値はあるのでしょうか?
確かに親の負担は大きく、厳しい指導や不合理なルールに悩まされることもあります。しかし、その一方で、野球を通じて得られる経験や友情、チームワークの大切さはかけがえのないものです。最近では、負担を軽減するために「保護者の役割を減らす」「全員試合に出られる仕組みを作る」といった改革を進めるチームも増えています。
もし子どもが本当に野球をやりたいのであれば、親としてはできるだけ負担を少なくしつつ、楽しめる環境を選ぶことが重要です。少年野球は、大人の意識改革によって、もっと良いものに変えられるはずです。